目の病気の中でも比較的頻繁に発症する病気のひとつが「ものもらい」です。ものもらいという名前は医学的な名称ではなく医学的には麦粒腫と呼ばれる疾患がこの目の疾患の正式名称です。また地方によっては「めばちこ」などとも呼ばれます。この目の病気は細菌感染が原因となって、目に赤みや腫れなどの炎症症状を発症する疾患です。ここでは、ものもらいを発症する細菌(原因菌)やどのように感染するのかなど発症症状の特徴やものもらいの基本的な知識について学習します。
ものもらいという名称はイメージ的にわかりやすい名前ではありますが医学的な正式名称において、ものもらいは
●麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
と呼ばれる目の病気のことを指しております。
ものもらいと同様の目の疾患を指す言葉としては「めばちこ」などがありますが、めばちこは日本国内の一部の地域で使用されている方言でもあり、ものもらい同様に麦粒腫のことを指しております。
ちょっとした豆知識ではありますが、ここからの解説では麦粒腫よりも既に私たちの生活に馴染みのある「ものもらい」という表現で解説をしていきますのでご了承ください。
※「ものもらい」=「めばちこ」=「麦粒腫」
麦粒腫は主に、まぶたやまつげなどの雑菌が目に感染する形で発症する特徴があります。
この細菌の正体の多くはブドウ球菌と呼ばれる細菌の中でも黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌です。
この細菌の大きさ・サイズは直径で0.7~1ナノメートルというとても小さな大きさで目に見えるサイズではありません。
※ブドウ球菌の大きさは直径0.7~1ナノメートルととても小さい
黄色ブドウ球菌と言えば夏場に起こりやすい集団食中毒や肺炎、小児の髄膜炎など様々な感染症を引き起こす少し恐ろしいイメージのある細菌かもしれません。
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を起こしやすい子供がブドウ球菌に感染すると「飛び火」と呼ばれる皮膚感染症を発症することもあります。
ものもらいの原因菌であるこの黄色ブドウ球菌は皮膚感染を起こしますが、ものもらいの場合は他人に感染するようなことが無いこともひとつの特徴です。
ものもらいでは自分の手で目をこするなどの接触感染によって感染しまぶたの内側や外側に赤みや腫れをもたらします。
比較的容易に発症しやすい目の病気でもあり、後述しますが症状を発症してしまった場合でもものもらい症状に有効な効果を発揮する目薬もあります。
乳幼児期から発症する可能性をもつ目の病気でもある為、一度は発症経験がある方も多いかもしれません。
尚、まぶたの内側に生じるものもらいを内麦粒腫、まぶたの外側に生じるものもらいを外麦粒腫と呼びます。
ものもらい症状が出てきたため眼科へ行ってみると、診断結果は霰粒腫と呼ばれる疾患。前項では麦粒腫について解説しましたが、このものもらいと非常に類似する目の病気のひとつが、霰粒腫(さいりゅうしゅ)と呼ばれる目の病気です。麦粒腫と霰粒腫。初めて症状を発症したばかりの人はどちらの目の病気かについて区別することはまず出来ません。その為、眼科の診察を受けることなく家に残っていた目薬を使用するのは避けたほうが無難と言えるかもしれません。ここでは麦粒腫(ものもらい)と霰粒腫の違い。そして感染症に感染するメカニズムや感染症にかからないための予防対策について学習していきます。
霰粒腫とは、ものもらいのように、細菌や雑菌の感染によって発症することはありません。
ですから、麦粒腫と霰粒腫(さいりゅうしゅ)の最大の違いは細菌感染症であるかどうか?という点にあります。
感染症原因菌が異なるというのは非常に大きな違いであり特徴と言えるでしょう。
尚、霰粒腫の主な発症原因は、
●瞼板腺
●マイボーム腺
と呼ばれる目の周りの組織が何らかの要因によって詰まってしまう事によって発症する病気です。
霰粒腫の代表的な症状は目のまわり全体に炎症を起こしやすい点がひとつの特徴です。
炎症性の疾患であり目の腫れや赤みなどの症状がものもらいと非常に類似する為、素人判断ではこれらの区別はまず出来ません。
ものもらいの治療を継続しているがなかなか治らない。
このようなケースでは、もしかしたら実は霰粒腫であるのに自己判断で以前使用していた残りのものもらい用の点眼剤を使用しているなどのケースも考えられます。
この様な経緯からも、ものもらいに近い症状が発症してしまった場合は、適切な処置を行うためにも必ず眼科の専門医師の診断を受けることが重要となります。
人は多くの感染症に感染しやすい生物の一種です。私達が細菌に感染すると、熱や炎症、痙攣や筋肉や関節の節々の痛みなどの症状を発症するようになります。
この痛みや炎症などの症状を発症し始めた状態ではじめて感染症に感染したことが確認されることになります。
私たちの身の回りにはたくさんの微生物が存在しており、黄色ブドウ球菌に限らずに多くの細菌がうようよと存在しています。
これらの細菌は全て人体に害をもたらす細菌とは限らず、乳酸菌などの菌類のようにわたしたちの健康を守ってくれる細菌も多く存在しております。
※特有の症状を発症して初めて感染症に感染した事を示す
尚、これだけたくさんの細菌に囲まれた生活の中で、毎日のように感染症を発症しない原因には免疫力の働きが関与しております。
同じ細菌に触れても健康で体調が良く、元気な時には感染症にかからないケースが大半です。
逆に生活習慣の乱れや疲労の蓄積などによって体調管理が上手に出きなかった時などは免疫力が低下し、体は感染症にかかりやすくなってしまいます。
病院でまずは安静にし体力を戻しましょう。と言われた経験はありませんか?
感染症の予防対策で最も基本的な対策は日々の健康管理が一番大切、まずは低下した免疫力を戻していくことが大切であるからなのですね。
目が赤く腫れているけどもしかしたら「ものもらい」に感染してしまった?発症の可能性が検討される場合は、ものもらいの独特の症状を伴っているかどうかについて確認してみることが重要です。もし症状が類似している場合はすぐに眼科の受診を受けましょう。ここでは、代表的な独特の症状の一覧項目を見ながら自覚症状をチェックしていきます。
ものもらいの疑いが検討される場合は、まず自分自身の自覚症状を確認してみましょう。
ものもらいでは以下のような独特の症状を発症する傾向にあります。
目に関する病気には様々な疾患がありますので、以下の症状のみで、「ものもらい」と診断する事はもちろん出来ません。
診断の判断材料の1つとしてご参照下さい。
【ものもらいの主な症状・チェック項目】
◆まぶたが赤くなる
◆眼球に強いかゆみを感じる
◆まぶたに腫脹ができる
◆まぶたを上げにくい
◆まぶたの内部に膿が見える
◆まばたきをすると痛い
以上がものもらいの基本的な症状の一部です。
まぶたの内側に赤い腫れと、腫れの中心部に黄色の膿点が確認できる場合に関しては、ほぼ確実にものもらいと判断してもよいでしょう。
ものもらいは、目に直接触れる接触感染によって細菌の感染がおきるケースが大半です。ですから、このような状況になりやすい環境にある方には、常にものもらいを発症する可能性があると言えます。ここでは、主な感染経路や近年急速に普及したコンタクトレンズによる感染の可能性について学習します。
近年になりものもらいを発症するケースの中でも急増しているケースは
●コンタクトレンズの汚れ
によって細菌感染を発症するケースです。
コンタクトレンズは、眼球に直接あてる製品です。
その為、コンタクトレンズの取り扱いや保管方法はかなり清潔感を意識して管理しなければなりません。
コンタクトをつけ始めたばかりの頃はケアも細かくやっている方が大半ですが、慣れてくると徐々にレンズの保管方法や取扱がやや雑になてきてしまいがちです。
ものもらい症状を多く発症する方の傾向としてコンタクトレンズの使用者が急増している点があげられます。
最近では使い捨ての「1dayタイプコンタクトレンズ」などの広い普及もあり使用者が非常に多くなりました。
コンタクトレンズは目に直接あたるものですから、装着前にまつげなどに触れるだけでも細菌感染を起こす可能性があります。
治療用に使用する抗菌目薬などを使用する際も決してコンタクトレンズを付けたまま使用してはいけません。
コンタクトレンズを使用する際はこのような基本的な知識をしっかり身に付けて使用する事が大切です。
コンタクトレンズ以外の感染経路としては
●前髪が長く目に直接触れる
●汚れた布団やタオルで目をこする
●化粧が落ちて目に入る
などの要因によって、まぶたやまつげの細菌が目に進入する可能性が検討されます。
ものもらいを予防するには、まずこれらの習慣を整える事が大切です。
ものもらいができてしまった人が眼帯をしているのは良く見かける光景のひとつではないでしょうか?ものもらいは人にうつるからやはり眼帯は必要!もし「ものもらい」や「めばちこ」と呼ばれる目の病気が人にうつる感染症のような病気であると思っているのであればそれは要注意と言えるかもしれません。また早く治す為にも眼帯を利用する!このような考えも治療を誤解して把握している可能性があり先入観によって本来の回復を妨げてしまっているようなケースがあります。ここでは眼帯を使用する目的と眼帯の必要性について学習していきましょう。
ものもらいは、まぶたの表面やまつ毛に繁殖した主に黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌が目の周りの分泌腺や毛穴に感染することで化膿性の炎症をもたらす目の病気です。
例えば目をこすってしまうような行為で感染を考えてみると、まず目をこする行為の際に手は黄色ブドウ球菌が付着しているまぶたに触れてしまいます。
そして黄色ブドウ球菌が付着した手で目をこすると、目の周辺にある分泌腺や毛穴に感染します。
このように、ものもらいの原因菌である黄色ブドウ球菌は自分の手や腕、汗などによって感染する可能性をもつ細菌であることは間違いありません。
もし我が子がものもらいを発症している場合は、目に触れることがないように眼帯などを使用し、第三者への細菌感染を予防しようと考えるかもしれません。
しかし、ものもらいは人から人へうつる病気ではありません。
ですから基本的に眼帯の使用は必要ないのです。
逆に眼帯の装着によって眼帯に覆われた感染部分は密閉されてしまいます。
黄色ブドウ球菌などの細菌類は乾燥を嫌いますが、湿り気のある場所は大好きで眼帯に密閉されることで逆に細菌の繁殖を招いてしまう可能性が出てきます。
※ものもらいは第三者へは感染しないため他人への感染を意識して眼帯をする必要はない
できる限り早く治す為に眼帯を使用するという考えも同様に間違いです。
早く治したいのであれば、やはり出来る限り細菌が繁殖できない環境を整え、眼科でもらった抗生物質などのお薬やものもらい用の点眼剤の項で解説しているスルファメトキサゾール配合の点眼剤等でしっかり継続的な治療を行しかありません。
結果的に早期治療を考えた場合は眼帯の使用は避けたほうが良いことになります。
ものもらいはインフルエンザやアデノウイルスのように、ウイルス性の感染症ではありません。
基本的に人から人へ感染を起こすことはまずありません。
子供の場合はものもらいを発症してしまった場合は眼科の診察を受け、自宅看護を継続するようにしましょう。
尚、社会人の場合は、仕事をどうしても休むことができないケースで目が腫れた状態のまま職場に行くのは気が引ける方もいるでしょう。
ものもらいは伝染病と認識してしまっている人も多いため、そのまま職場に行くと間接的に避けられることがあるかもしれません。
本来は眼帯の使用は避けたいところですが、わざわざ感染の仕組みを説明してまわるような人もいないでしょうから、このような場合はできる限り通気性の高い眼帯を使用するなどで対処すると良いでしょう。
職場などでどうしても眼帯を使用しなければいけない場合は、出来る限りこまめに眼帯を交換するようにしましょう。
ものもらいを発症している目に触れた眼帯には黄色ブドウ球菌が付着するため、付着した眼帯はそのまま感染源となります。
眼帯はそれほど高価なものでもありませんし、近所のドラッグストアや最近ではコンビニで販売している店舗も見かけます。
実際に眼帯を使用する期間も一定期間ですから少し多めに購入しておき、こまめに交換するような心がけが大切と言えるでしょう。
ものもらいを既に発症してしまったら?ものもらいはここまで解説してきた通り、細菌感染に寄って症状を発症する感染症です。その為、既に症状を発症している場合はすぐに治療を開始することが重要です。治療の基本は抗菌薬や抗生物質、また専用の点眼剤などを併用し治療を進めていくことになります。ここでは既に症状を発症している場合の治療方法について学習して行きましょう。
ものもらいの治療は、基本的に「抗菌薬」を主体とした治療を実践していく事になります。
ものもらいの原因となる細菌はブドウ球菌と呼ばれる細菌類です。
ですから、ブドウ球菌などに効力を発揮する
●ペニシリン
●セファロスポリン系
などの抗菌薬を服用し、細菌を内部から撲滅する治療を行なっていきます。
ものもらいの治療では、体の内部から治療を行う内服薬による薬物治療とともに点眼療法を併用して患部の炎症を内部と外部から抑制していきます。
点眼療法ではものもらいに効く目薬を使用し治療を行うことが大切です。
⇒ものもらいに効く目薬・点眼剤の解説
軽度のものもらい症状では、これらの治療で基本的に1~2週間程度で症状は回復し元通りの正常なまぶたに戻ります。
目に関する病気の中では比較的症状が軽くしっかりとした治療を行うことで完治までの日数も短い点がものもらいの特徴でもあります。
目の疾患であることから当然軽視はできませんが、過度な心配も必要ありません。
治療の開始は何よりもまず眼科の診察。医師と相談の上適切な処置を行えば治療期間は短縮できるでしょう。
ものもらいに効く目薬にはいったいどのような目薬があるのでしょうか?細菌に効く目薬であってもやはり目に刺激が強すぎたり、使用しにくい点眼剤では困りますね。ここでは普段使用している目薬とものもらいの治療で使用する目薬の成分の違いや、どのような成分が治療に有効となのか?等、ものもらいの治療で使用する点眼剤について見ていきましょう。
ものもらいは、目や目のまわりに付着した細菌(ブドウ球菌)が化膿性の炎症を起こす目の病気です。
細菌の感染経路としては、
●まぶたの皮脂腺
●まつげの根元
などに細菌が発生するケースが多く治療ではこの菌を退治することが重要となります。
ものもらいは細菌により炎症を起こす目の病気ですから通常の目薬をしても治療効果は得られません。
その為、治療を行う際の目薬は抗菌作用をもつ専用の目薬を使用する事になります。
但し目はデリケートな組織ですから刺激が強すぎる抗菌剤は使用できません。
目にやさしく、かつ抗菌剤として有効な成分としては
●スルファメトキサゾール
の存在があげられます。
スルファメトキサゾールとは、強い抗菌作用をもつ持続性の高い成分で、ものもらいなどの細菌性の炎症には非常に有効に働きます。
普段から目薬を利用している方でも、その成分までを確認して使用している人はほとんどいないのが現状です。
ものもらいを発症し、目薬を使用する際は、これらの成分の配合を確認した上で利用を検討する事が重要です。