半月板の損傷は特にスポーツ選手に多く発症する膝のクッションの役割を持つ半月板組織が何らかの原因で異常をきたす膝関節の代表的な疾患の一つです。半月板を損傷するとロッキングと呼ばれる独特の症状を発症します。ここではロッキングとはどのような症状を示すのか?また半月板損傷時にはどのような症状を起こしやすいのか?など症状の特徴について確認していきます。
半月板損傷とは、膝関節に大きな外力が働き「関節可動範囲を超えた屈曲」や「無理な回旋力」などが膝関節に働いた時に、膝の内部の半月板と呼ばれる組織が文字通り損傷してしまう膝の疾患の事です。
半月板損傷という言葉を良く耳にするのは、スポーツ選手ではないでしょうか?
半月板損傷は実際にスポーツアスリートの中でも特に人体の接触(コンタクト)の多いスポーツ競技を実践しているアスリートに多く発症します。
また半月板の一部が関節接触面の間にはさみ込まれることによって、膝関節の稼動範囲に制限が加わるケースも多く見られる症状のひとつです。
半月板損傷の疑いがある場合は、まず痛みなどの自覚症状を確認してみましょう。
半月板を損傷すると幾つかの独特の症状を発症します。
膝の病気や疾患には様々な障害がありますので、幾つかの症状のみで半月板損傷と診断する事はもちろん出来ません。
しかし、症状から半月板損傷の可能性を検討する事は可能です。
以下に半月板を損傷してしまった場合に生じる症状の特徴をまとめます。
現在、もしかしたら半月板にダメージを負ったかもしれない…と感じている方は以下の項目に該当するかどうか確認してみると良いでしょう。
【半月板損傷の代表的な症状】
◆膝の屈伸時に異音を発する
◆膝関節内に内出血
◆関節水症(膝関節に水が溜まる症状)
◆関節の稼動範囲の制限(曲がりにくいなどの違和感も含む)
◆膝を伸ばす際に激痛
以上は半月板損傷時に現れやすい主な症状の特徴です。
半月板損傷の最も代表的な症状としては膝の「ロッキング」と呼ばれる症状があります。
ロッキングとは膝を深く曲げようとした際に、引っ掛かり感覚を感じ、上手に膝を曲げることが出きなくなる状態のことで、傷を負った半月板組織が関節内に引っかかってしまうことが原因です。
ロッキング症状を感じている場合は手術が必要となるケースもありますので必ず整形外科の受診を受けるようにしましょう。
※膝のロッキングは半月板損傷の重要な診断基準です
半月板の名前の由来をご存知でしょうか?
この半月板という名称は実は母親の体内にいる際に、半月板の形状が半月状態である事から名前がつけられております。
この半月形状の中心部分は出産時までにくり抜かれたような形状に徐々に変化し、実際には三日月形状の半月板となって赤ちゃんが誕生し、生後はその形状を維持します。
ですから、半月板と言う名前ではありますが、実際の私たちの半月板組織は三日月形状の軟骨組織ということになります。
尚、半月版は内側半月版(ないそくはんげつばん)と外側半月版(がいそくはんげつばん)という2種類の半月板があり、この2種類の半月板の先端が中央部分で重なり8の字型を形成しているのが特徴です。
半月板損傷を発症する原因にはどのような原因があるのでしょうか?ここでは半月板損傷をもたらす代表的な原因と主なスポーツ種目についてチェックしていきます。
半月板損傷は、可能性の範囲で言えばどの年代にでも発症する可能性のある膝のスポーツ障害です。
しかし、発症の傾向から、発症しやすい年代や発症しやすいスポーツ競技などの一定の傾向は確認できます。
半月板損傷を発症しやすいスポーツ競技としては以下の種目があげられます。
【半月板損傷を発症しやすいスポーツ競技】
☆ラグビー
☆サッカー
☆バスケットボール
☆バレーボール
☆柔道
☆レスリング
☆野球
☆相撲
☆アメリカンフットボール
スポーツ種目で見ると人体の接触が多いスポーツ競技や繰り返し膝に負担が加わりやすい競技種目に多く発症する傾向にあるようです。
尚、スポーツ外傷によって発症する半月板損傷は内側半月板損傷と呼ばれる、膝の内側の半月板の損傷が大半のケースを占めます。
※スポーツ選手の半月板損傷の多くは内側半月板損傷(ないそくはんげつばんそんしょう)である
また、稀に生まれもって半月板組織に異常がみられる「先天性半月板損傷」が見られるケースもありますが、この先天性半月板損傷に関しては外側半月板損傷が多い傾向にあります。
円盤状半月板とは、半月板の変形に伴って痛みを生じる変形性関節障害の症状を指す膝軟骨組織の障害です。
円盤状半月板では、三日月状の半月板軟骨の中央部分が変形によって埋まってしまい、半月板が文字通り円盤のような形状になってしまう事から円盤状半月板と呼ばれております。
円盤状半月板を発症するケースの大半は前述した先天性半月板損傷同様に外側半月板と呼ばれる体側側にある半月板で、常に半月板がロッキング状態になる症状をもつのが大きな特徴です。
ロッキングが続くと、通常の歩行動作などでも関節内に磨耗が生じ、関節に炎症をきたすようになります。
半月板損傷を発症する原因は主に、半月板へ過度の負荷が急激に加わることが原因です。
半月板はそもそも、非常に弾性に富んだ「線維軟骨」によって形成されております。
この半月板は大腿骨・脛骨をつなぐ膝関節のすきまに入り込む形で位置し、膝関節へ加わる衝撃を和らげるクッションの役割を担っております。
膝は通常、体重が大きくかかる部分である為、半月板はよほどの事がない限り簡単に壊れるような組織ではありません。
しかし、本来あるべき関節形状から逸脱した状態で関節に大きな外力が加わると比較的容易に損傷しやすい部位であることも事実です。
半月板を損傷してしまった場合はどのような治療法を行えば良いのでしょうか?ここでは損傷の度合いにもよりますが発症直後から実践できる応急処置について見ていきましょう。
半月板損傷を発症してしまった場合の治療方法について見ていきましょう。
半月板損傷の治療は、基本的に症状の度合い・レベルを確認しながら治療法の検討を選択していく形となります。
手術を行なわない保存的な治療法としては大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)の強化を行い、膝の伸展動作に関する筋肉をリハビリ過程において強化していく形となります。
しかし、半月板損傷の症状の度合いによっては、手術療法によって治療をおこなわなくては根本的な治療とならないケースも多く存在します。
これは、部分断裂、もしくは剥離した半月板の損傷度合いが大きいと自然治癒力のみで半月板が回復する事は難しい為です。
手術療法では、内視鏡による関節鏡手術が主流となっており、縫合手術や部分切除手術が行なわれる事となります。
部分切除手術などを選択した場合は、手術自体は短時間で終わりますが1週間~2週間程度の入院が必要となり、スポーツ選手の場合は競技に復帰するまでに数ヶ月のリハビリ期間を必要とするケースがあります。
半月板損傷の疑いがある場合の応急処置方法について見ていきましょう。
半月板損傷の応急処置では、まず最初に行うべき基本的な応急処置として「RICE処置」を基本に治療を実践していきます。
RICE処置とは、スポーツ障害全般の応急処置の手法として欧米で実践されている基本的な処置方法です。
近年では日本でもこのRICE処置は、応急処置の基本処置として広く認識されるようになった為、ご存じの方も多いかもしれません。
尚、RICE(ライス)はその処置方法に関する単語の頭文字から名づけられております。
以下、RICE処置方法を簡潔にまとめましたのでご参照下さい。
☆Rest = 安静
☆Ice = アイシング
☆Compression = 圧迫・固定
☆Elevation = 挙上
優先順位はその状況において変化します。
半月板損傷の応急処置に関しては、他の障害の可能性も考えこれら応急処置を行なう事が念頭におかれます。
しかし関節の可動範囲制限などの症状が受傷直後に見られるようなケースではロッキング症状を発症している可能性がありますので、早期段階で整形外科の診察を受けることが重要です。
近年の半月板手術の主流は人体に最も負担が少なく、また早い段階でリハビリを開始できる半月板内視鏡手術と呼ばれる手術方法です。ここでは半月板内視鏡手術の利点と欠点について解説します。
半月版損傷の手術では、基本的に内視鏡と呼ばれる関節鏡を使用する手術を行うのが基本です。
関節鏡手術が普及するまでの一昔前までは、膝関節近位を切開する切開手術が基本でした。
しかし切開手術の場合は、傷口が大きくなったり復帰までに時間を要するなどの要因がある事から近年では、ほぼ9割以上が関節鏡を利用した手術を実施するようになってきております。
関節鏡を用いる手術では、膝の前面部位を2~3箇所5mm程度切開し、その切開部位から内部を確認しながら手術を行っていきます。
半月板の手術は現在ではほぼ9割以上が内視鏡手術で行われているのが現状です。
ではここで内視鏡手術を選択するメリットについても確認しておきましょう。
内視鏡外科手術のメリットは、
☆何よりも傷口が最小限に抑えることができる
☆切開後の状況で手術方法を検討可能
などの大きなメリットがあります。
特に、長期間戦線離脱をする事が出来ないスポーツアスリートであれば回復までのサイクルが短い内視鏡手術は優先的に選択したい手術です。
但しデメリットとしてはどこでも手術を行えるわけではなく内視鏡設備が備わっている医療機関で手術を行う必要があります。
手術では、損傷した半月板そのものを摘出する手術を行うケースが大半です。
この手術で、ロッキング症状を解消できると共に、リハビリを重ねる事で現場への復帰も早まります。
半月版の手術では、その損傷の度合いにより手術方法が異なってきます。
半月版のロッキング症状によって、半月版が部分断裂しているケースでは「半月版縫合手術」を行う事になります。
半月版縫合手術では、断裂している半月版軟骨組織を文字通り縫合し本来あるべき部位に戻す治療を行います。
手術が成功すると、回復期間も非常に早く、私生活への復帰が最も早く可能となります。
尚、縫合が困難なケースでは、半月版一部除去手術を行うケースも多くあります。
半月版除去手術は以前は半月版手術の基本となる手術方法でしたが、近年、変形性膝関節症の発症を早める可能性を持つ事が医学的に立証された為、縫合手術が困難なケースでのみ除去手術が行われるようになっております。