帝王病・贅沢病とも呼ばれる痛風疾患。この痛風疾患は大半のケースで男性に多く発症する傾向があることが確認されております。発症確率で言えば実に9割以上が男性です。ここでは男性と女性ではなぜ発症確率が異なるのか?また女性でも痛風症を発症しやくなる年代など、痛風の基礎知識について学習して行きましょう。
1.痛風とは?
2.発症割合は9割以上が男性
3.女性が痛風になりにくい理由
4.女性の場合は更年期を過ぎると発症しやすくなる
痛風とは、膝や股関節、足関節などの関節内に「尿酸」と呼ばれる物質が蓄積することによって激しい痛みを引き起こす関節の病気のひとつです。
発症原因が栄養分の偏りによる偏食や、食べ過ぎなどによる原因から発症する傾向にあることから
●帝王病
●贅沢病
などとも呼ばれる事で有名な膝や足の指などに痛みを生じる病気です。
痛風の発症率は一般成人のデータによると実に全体の90%以上が成人の男性に発症することもわかってきております。
会社でのお付き合いや夜遅くまでの残業後の食事。
このような不規則な食生活を伴う生活習慣が男性に多いという現状を示しているのかもしれません。
※痛風の発症率は圧倒的に男性が多い
痛風の最大の特徴はこの成人男性にとにかく圧倒的に多く発症する点にあるとも言えるでしょう。
痛風は男性の発症割合が非常に高い傾向を持つ病気ですが、女性でも極希に症状を発症するようなケースがあります。
しかし、その前に何故女性は痛風症を発症しにくいのでしょうか?
この女性に痛風が発症しにくい原因のひとつ後述していきますが痛風の原因物質である尿酸と女性ホルモンの関連性が関与してきます。
女性は文字通り女性ホルモンが男性よりも多く分泌されることで女性らしい体へと変化し、女性としての機能が成熟していきます。
また、この女性ホルモンは肉体的な影響の他にも様々な働きを持っており、そのひとつの働きとして尿酸の利尿作用という働きがあります。
尿酸を関節内に貯めこむことが少ない女性は痛風になりにくい理由がわかりますね。
女性が痛風症を発症する確率が非常に低い原因は、前述した通り女性ホルモンの分泌による影響を受ける為です。
しかし、更年期を迎えると女性の体は女性ホルモンの分泌量が急激に低下するため様々なトラブルを起こすようになります。
この更年期特有の病気を更年期障害とも呼びますが、痛風の女性患者の大半は閉経後など女性ホルモンの分泌量が低下しはじめてから発症する傾向があるため、更年期以降は女性であっても痛風の発症確率が高くなると把握しておきましょう。
とは言え、男性の痛風発症者数と比較すると、やはり女性が圧倒的に少ないという傾向に変わりはありません。
日本で痛風症状が初めて確認されたのはおよそ100年ほど前の話。その後第二次世界大戦があり、戦後の日本では痛風を発症する人がほとんどいなかったそうです。日本食は痛風患者の食事としては理想的な食事だったのでしょうか?しかし近年は日本国内の痛風患者が急激に増加している傾向が見られます。ここでは痛風人口が増加している原因と背景について確認していきましょう。
1.日本食は痛風に良い?
2.日本食離れが進む
3.痛風患者が急激に増えた理由
4.高齢化社会と食生活の欧米化
欧米の方に比べると、日本人の痛風の発生率は圧倒的に低いと言われているのをご存知でしょうか?
男性と女性の比率では圧倒的に男性が高い事は前項でお話ししましたが、欧米の方々の発症割合で見ると日本人が痛風を発症する割合はかなり低いのです。
日本で初めて痛風として認識された医学的な患者の報告があったのは今からおよそ100年程度も前の話です。
これは欧米や西洋で痛風の症状が確認された時期と比べるとかなり遅い時期であることになります。
この最たる原因は実は日本食にあるそうです。
日本食は基本的に欧米の方々の食事と比較すると「栄養バランス」が良いとされています。
肉中心よりも日本食の場合はどちらかと言えば魚などがメインにある点も日本食が優れている点と言えるかもしれません。
また、戦争の影響もあり、第二次世界大戦直後は痛風患者はほとんどいなかったと聞きます。
贅沢病と言われる病気ですから、戦争に負けた日本人は痛風を起こすほどの栄養がとれていなかったのですね。
現在の日本で痛風患者が増加している要因のひとつにファーストフード店などの大規模な日本進出がひとつの原因にあると言われております。
食生活の欧米化に伴い徐々に栄養バランスが優れているとされていた日本食離れが進んでいるひとつの傾向が見てとれます。
痛風患者が日本でも激増しはじめたのは、1960年ごろからと言われております。
これは高度経済成長期にちょうど重なります。
日本人の食生活がどんどん豊かになるにつれて、痛風にかかる人が急増しはじめたのです。
そして2015年には、日本でも約70万人~80万人程度の痛風患者、そして100万人以上の痛風予備軍がいると言われております。
このように痛風患者が増加の一途を辿る最大の原因は「食生活の変化」と「高齢化社会への移行」が背景にあります。
特に日本の場合は世界的に見てもトップレベルの長寿国であり男女平均と女性の平均寿命に関してはWHO世界保健統計でも常に1位となっていることから、更年期以降の女性の痛風患者も今後は増えてくるでしょう。
日本でもマクドナルドなどのファーストフード店が多くなりましたが欧米食がどんどん普及し始めているのも痛風患者や痛風予備軍が増加しているひとつの原因です。
欧米食の特徴は、とにかく高カロリー食、脂肪分の多い食べ物が多い点が特徴にあります。
体の比較的大きな欧米人と比較すると日本人の体はまだまだ小さく、同様の食事量では栄養過多になってしまう可能性もあります。
また高齢化社会への移行と共に成人以上で発症しやすい痛風患者の人口は今後益々増加してくる可能性も検討されております。
痛風かもしれないな?もしそう感じた場合は足の指から足の甲、そしてお酒を飲むとアキレス腱や膝に痛みが生じるかどうか?など幾つかの症状を確認してみることが大切です。特に赤くテカテカとした腫れが確認される場合は要注意!の合図です。ここでは痛風患者特有の症状や痛風発作による痛みの原因について学習します。
1.痛風の初期症状について
2.症状の自己診断、チェック方法
3.痛風の痛みのメカニズム
4.白血球が大活躍?免疫システムの防衛反応
痛風の初期症状の大半は「足の親指の付け根あたり」に痛みが発生する症状が最も多くなります。
もし現在足の親指に痛みをすでに感じている場合は、痛風を発症している可能性が非常に高いと言えるでしょう。
次いで症状があらわれやすい部位は、「足の甲」や「アキレス腱」そして「膝関節」です。
このように、痛風の初期症状のほとんどは下半身に痛みを発症する傾向があります。
この下半身に痛みを伴う傾向にある原因はまだ厳密に解明されてはおりません。
※痛風の痛みは主に下半身の関節に痛みを発症する
しかし、腎臓に直結する病気でもあることから、重力の関係で腎臓以下の組織に影響を与えるのではないか?
との見解も考えられているようです。
痛風と腎臓疾患は切っても切れない関係でもあるため、腎臓以下の組織に影響が出やすいという可能性も確かに考えられる部分もありますね。
尚、痛風の痛みは、針がチクチク指すような痛みから、激しい激痛まで様々な痛み症状を発生します。
「もしかしたら通風かもしれない・・・」
もしそう思われる方は、痛みを感じている関節をチェックしてください。
まず、痛みを感じている関節部分の皮膚の色を見ます。
ここで皮膚が赤く腫れあがっているなどの症状が見られる場合は、かなり要注意です。
さらに赤く腫れ上がっている患部がテカテカと光っているなどの症状が目視でも容易に確認できる場合は、ほぼ痛風に間違いありません。
このような場合は、すぐに治療を開始する必要があります。
テカテカした赤い腫れは痛風の最大の特徴のひとつでもあります。
※足に表面が光っているような赤い腫れが確認できる場合は痛風の可能性が大きい
風が吹くだけで跳び上がるほど痛い!そのような激しい激痛をもたらす症状が特徴である痛風発作。
この痛風という文字を見れば「風」と「痛」ですから、本当に痛風発作は激痛であることがわかります。
しかし、この痛風発作は何故このような激しい痛み症状を繰り返し伴うのでしょうか?
この痛みのメカニズムには、実は人体の免疫反応のメカニズムが関与しております。
痛風では関節内に尿酸ナトリウムの結晶構造が付着しはじめることから症状が進行していきます。
この関節内に付着した尿酸ナトリウムの結晶は人体にとっては不必要な異物です。
異物と認識された場合はいよいよ免疫システムの特攻隊とも言える白血球が出動します。
頼もしい白血球はこの尿酸結晶を全て撃退しようと激しい攻撃を開始し始めるようになります。
もうお解りですね。この攻撃時の痛みこそが痛風発作の痛みの原因という訳です。
この白血球の激しい攻撃は人体を防衛するための免疫システムによる正しい反応でありとても重要な人体機能です。
しかし痛風ではこの免疫システムの活躍が患者本人に激痛として伝わっていたのですね。
痛風を発症している事が確認された場合は早期に治療を開始する必要があります。治療の基本は2種類の治療法を平行して行うこと。但しプリン体制限食などの食事療法を開始する場合は一度本当に必要かどうかを確認しておきましょう。
【痛風の治療方法】
痛風を発症してしまった場合の具体的な治療方法を確認していきます。
痛風治療の基本はまず2種類の治療法から治療を進めていく方法が基本です。
まずひとつ目の治療法は、食事の改善による食事療法と呼ばれる治療法で、最もオーソドックスな方法です。
これは痛風疾患の根本的な治療法であり、痛風患者は必ずこの食事療法を実践しなければいけません。
そしてもうひとつの治療法が薬物療法です。
薬物療法とは文字通り、薬を使用して炎症や尿酸値をコントロールする治療法です。
基本的には、双方の治療法を平行して行なっていくのが痛風治療の基本となります。
痛風の治療を開始すると必ずと言って良いほど一度は耳にする言葉のひとつにプリン体があります。
痛風と言えばプリン体を減らす!などと思われているほど痛風とプリン体は関連が深いと考えられていたのも事実です。
しかし、現代医学では、痛風とプリン体の関連性は非常に低いという事も徐々にわかりはじめてきております。
確かにプリン体が与える影響はゼロではありません。
しかし、世間で騒がれているほどプリン体が痛風発症に与える影響は少ないという事です。
ですから「プリン体制限食」などと一時期流行した食事療法は現在では適切な食事療法であるとは言えません。
そもそもプリン体という物質は、食事から取り入れられる量は僅かな量です。
そして、プリン体の大半は体内で製造されています。
これは食事から摂取する量をはるかにしのぐ量なのです。
尿酸は生命を維持する上で欠かせない成分ですが、毎日しっかりと体外へ排泄されながらその必要量を維持しております。ここでは痛風を発症していない通常の場合における尿酸の排泄割合を確認します。
【尿酸の排泄機能低下が最大の問題】
痛風疾患を発症した場合の最大の問題点は尿酸の排泄が正常に行なわれなくなる点にあります。
痛風は基本的に普通の一般的な量とされる食事量であれば発症する事はなかなかありません。
しかし、過度に体内にプリン体がたまり込むと、体は一生懸命プリン体を分解しようとして働きます。
このプリン体の分解をするための作業の際に産み出される物質が尿酸と呼ばれる物質です。
この尿酸は通常、おしっこ(尿)として排泄されます。
しかし、尿酸があまりにも増えると、うまく排泄できずに体内に結晶として残ってしまう事になります。
この結晶は関節内部にとどまりやがて関節などに定着します。
こうなると、尿の排泄機能そのものが徐々に機能を低下していくことになります。
痛風を発症することによる最大の問題点はこの尿酸を体外へ排泄する機能が低下していく点にあるのです。
痛風の治療のポイントは尿酸をしっかり体外へ排泄する事が基本です。
人間の体には常時、1200mg程度の尿酸が蓄積されております。
そしてこの尿酸の約半数が毎日対外へ放出され、そしてあらたに体内に蓄えられていきます。
この尿酸の排出割合については
●75%程度が尿として
●25%程度が便や汗として
体外へ排泄されております。
これらの機能が正常に作用していれば尿酸が体内に蓄積する事もありませんね。
食事療法や薬物療法による痛風治療を実践する前に幾つかの覚えておきたいポイントをチェックしておきましょう。サウナが治療に良いって本当?早食いやドカ食いは何故駄目なの?痛風治療のポイントをおさらいします。
【痛風の治療のポイント】
痛風の治療のポイントはやはり前項でも解説した体内の尿酸をしっかり排泄させることです。
その為には、あまりにも多くの食事を一度に摂取するような行為、いわゆる「ドカ食い」などは絶対に避けなければいけません。
これは食べ物の細胞の核をなすプリン体が体内に過度に蓄積されると、プリン体の分解作用が過剰に働き尿酸が急激に増加してしまうためです。
仕事の合間を縫って短時間で食事をしなければいけないケースなどでもやはり「ドカ食い」や「早食い」はやめなければいけないのです。
食事療法のポイントは食事を小分けにしてあげることが大切です。
そして、尿酸の排泄割合の約25%を占める便と汗。
中でも汗からも尿酸が排泄される点を見逃してはいけません。
尿に比べると僅かな割合だとしても、しっかり尿酸をコントロールするには適量の汗を出す事も必要なのですね。
汗をかくのに最も適しているのはやはり運動です。
よくダイエットでサウナを利用する人がいます。
サウナは水分を大量に対外へ放出し、体の新陳代謝を高める役割があることが知られております。
しかし、失った水分はしっかり補給する事が大切です。
またカロリー消費は思っているよりも少ないのでサウナだけでダイエットは現実的には達成できません。
しかし、痛風治療に関してはサウナの効果は高いと言えます。
これは、ただ単純に汗をかくだけでも尿酸を対外へ放出する作用が働く為です。
直接的なダイエット効果とはならなくとも、尿酸を排泄する流れを構築するにはサウナは効果的です。
このように汗を出す習慣を作る事も痛風治療の基本として大切な事なのです。
痛風は症状が進行すると腎痛風と呼ばれる重い合併症を発症する可能性を持つ疾患へと進行します。人工透析などを必要とする腎不全などが腎痛風の合併症の代表です。
【腎臓の役割について】
腎臓は体内の栄養分や、有害物質をろ過する働きをもっている体内の器官です。
この腎臓が行う濾過は腎臓内の糸球体の働きで血液がろ過され、尿細管から必要な栄養素を再吸収して体内を循環します。
腎臓の位置は一番下の肋骨の内部に左右対になって収まっており尿細管で再吸収されなかった老廃物を膀胱へ送り出し体外へ排泄します。
この腎臓は体内の老廃物を除去し常にクリーンな血液を体内に循環させる働きをもつ非常に重要な組織なのです。
腎臓の働きが低下すると、体内のあらゆる体液が老廃物によって犯されてしまいます。
尿酸などの老廃物は腎臓から膀胱へ送られますが、この尿酸が腎臓内に過剰に蓄積する症状を伴う痛風は腎痛風(じんつうふう)と呼ばれます。
腎痛風を発症すると、体内の尿酸の排泄機能がどんどん低下してしまいます。
この段階になると、薬物療法による治療を平行して行なわなくては完治ができなくなります。
痛風を放っておくと、各関節に溜まった尿酸の結晶はやがて、腎臓に蓄積されるようになります。
そして腎痛風と呼ばれる症状に進展していきます。
痛風で怖いのは、実はこの腎痛風への進展性が非常に高い点にあります。
その理由は、腎痛風は腎不全・尿毒症などの症状を発症する可能性をもっている為です。
腎不全は言わずと知れた、「死」に至る危険性を持つ病気のひとつです。
ですからたかが痛風とはあなどれないのですね。
腎臓疾患の元を辿ると、痛風が関与しているケースも多いのです。
痛風患者はビールやワインなどのお酒の摂取を控える必要があると聞いたことがある方も多いでしょう。しかし何故アルコールの摂取が痛風に影響を与えるのでしょうか?
【お酒は本当に控えたほうがいい?】
痛風患者の大半は比較的多量のお酒を飲む人が多いと言われております。
ビールを飲むと膝が痛くなる!などお酒と痛風は大きな関連性が見られそうな気がしますが実際にお酒と痛風は何か関係があるのでしょうか?
お酒は以外にもカロリーが高い事が知られています。高カロリーの摂取は、痛風には影響があるようにも感じます。
しかし、高カロリー食が痛風に直接影響を与えることはあまりありません。
痛風で問題となるのはやはりここでも尿酸です。
高カロリーの糖質を多く含む物質を控えるべき病気は痛風よりも糖尿病です。
では、お酒は痛風患者に問題ないのでしょうか?
この答えはやはりNoなのですが実は、お酒はカロリーではなくお酒の持っている性質に問題があります。
これは、アルコールを摂取すると尿酸の排泄作用が低下する事が確認されているためです。
お酒を飲むとトイレが近くなった経験がある方も多いかと思います。
お酒を飲むとアルコールの働きにより尿意を催しますが、尿として尿酸は排泄されにくくなってしまっているのです。
すると水分ばかりは尿から体外へ排出されますが尿酸は体内に残ってしまうため、逆に尿酸の体内濃度が高くなっていきます。
これが痛風患者が飲酒によって生じる最大の問題なのです。
痛風を予防する方法は結論から言えば普段の生活から改善していくしか予防方法はありません。
●食べ過ぎの方は食べすぎを控えて尿酸の増えすぎを控える
●運動不足の人は、一日一回、汗を対外へ出すような環境を作る
この簡単な2点を実践するだけでも本当は痛風を発症することはないのです。
大切な事は繰り返しますが「尿酸値」です。
尿酸値さえしっかりコントロール出来ていれば、痛風になることはほとんどありません。
高カロリー食を食べようとも尿酸値が適切であれば問題ないのですね。
痛風治療の基本である食事療法は、食事制限ではありません。
また食事療法で改善できるのは体内のプリン体のわずかな部分でしかありません。
この僅かな改善を継続していくことが自分自身で実践できる痛風予防対策の基本です。