胃カメラ生検の知識

胃カメラ生検とは?食道・胃・十二指腸内の検査・パパニコロウ染色による分類・判定基準の解説。

◆胃カメラ生検の解説(もくじ)

◆食道・胃・十二指腸内の検査

 胃カメラ検査を受けた際に、内視鏡スコープに映しだされた映像にやや疑わしい変色した組織が確認された場合、状況によってはその場で生検用の細胞組織の採取を行うケースがあります。ここでは、胃カメラ検査時に並行して行われる生検について確認します。

【病気の可能性を生検で確認する】

 胃カメラ検査による内視鏡診察が行われるケースは定期健診や健康診断時などを覗くと、食道や胃、十二指腸などの上部消化器官に何かしらの病変を発症している可能性が検討されるケースが大半です。

 胃カメラでは実際に内部から器官の状態を確認できるため、どのような症状がどのように進行しているのかを見極めやすくなるという利点があります。

 胃カメラ検査の際に、生検を行う事になった場合は、内視鏡カメラに映しだされた映像に疑わしい病変部分が確認されていたり、判断がつきにくいびらんなどがあり、念の為、組織・細胞検査を通して状況をより詳しく把握する為です。

◆胃カメラ検査中に細胞組織を採取する利点

 胃カメラ検査で生検を行う場合は、内視鏡スコープの先端に取り付けられているとても小さなハサミ状の器具を使用して組織の一部を採取します。

 胃カメラで生検を行う利点は、内部の状況を映像で確認し、異常が確認される部位や病変などが疑わしい部位を検査中に採取できる点にあります。

 胃カメラ検査の経験をお持ちの方はご存知かと思いますが、胃カメラ検診では前日からの食事制限と、喉から食道にかけての麻酔、そして検査中に胃の動きをより確認しやすいように胃の活動を抑制する鎮静薬の注射が執り行われます。

 ですから一日で上部消化器官の確認を行い、仮にポリープなどが発見された場合は生検用の細胞組織をその場で採取し、止血までの処置をまとめて行えることは患者にとっての負担軽減にも繋がるのです。

◆ガン細胞・腫瘍の生検

 胃カメラの実施時に採取した細胞を検査する細胞検査(細胞診)はどのように腫瘍の判定を行なっているのでしょうか?ここでは生検の必要性とパパニコロウ染色による分類・判定についてチェックして行きましょう。

【ガン細胞・腫瘍の生検】

 臓器や筋肉、骨の骨髄などの細胞組織の一部を採取し、顕微鏡で細胞の状態を確認する検査を細胞診、もしくは組織・細胞検査と言います。

 また、細胞診を行うために組織の一部を採取することを生検と呼び、主にガン細胞・腫瘍が確認された場合に診断の主力となって行われる検査が生検です。

 ガン以外で生検が実施される部位としては肺や肝臓・腎臓・リンパ節・乳腺・子宮の他、筋肉組織や骨髄なども生検の対象となります。

 生検は胃カメラから目視でも確認できるような腫瘍がある場合や、映像だけでは症状が疑わしいケースなどでも実施されますが、内視鏡による小さな傷とは言え、ポリープや内壁の一部を切開する事になるため、止血処置や傷口からの細菌感染に関しては最大の注意が必要となります。

 その為、肝臓や腎臓などの生検が行われるケースでは、検査より2~3日前から入院をして検査に備えます。

 尚、胃カメラ検査で生検が行われるケースで疑われる疾患としては、食道がんや胃がん、そして胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの可能性が検討されます。

◆パパニコロウ染色による分類・判定の基準

 胃カメラで仮に腫瘍や潰瘍が確認されたとしても、その腫瘍や潰瘍が良性腫瘍か悪性腫瘍かによってその後の対応は180度変わってきます。

 腫瘍も潰瘍も良性と悪性がある為、まず対象部位を採取し判定を行う事が重要視されるのはその為です。

胃カメラ検査と生検のポイント(図)

 尚、組織・細胞検査(細胞診)の判定を行うための染色方法としては「パパニコロウ染色」・「ギムザ染色(メイ・ギムザ染色)」・「HE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)」の3種類の染色方法があります。

 中でも現在、腫瘍の良性・悪性の判定では「パパニコロウ染色」と呼ばれる5段階の判定法が主流の判定方法となっております。

【パパニコロウ染色による分類・判定の基準】
クラス定性判定内容
クラスⅠ陰性異型もしくは異常細胞を認めない
クラスⅡ陰性異型もしくは異常細胞を認めるが悪性の疑いが無いもの
クラスⅢ擬陽性悪性の疑いのある異常細胞を認めるが悪性と断定できないもの
クラスⅣ陽性悪性細胞と判断可能だが比較的悪性の特徴に乏しい
クラスⅤ陽性明らかな悪性細胞を多数認める

 尚、パパニコロウ分類は大きな範囲での分類しかできないため、日本ではパパニコロウ染色による判定を母体として作成された「日母分類」によって、分類されるケースも多くなってきております。