腱反射は何故病気や症状の診断で利用されるのでしょうか?ここでは腱反射の亢進と消失のメカニズム、人体の防衛反応の仕組みについて解説します。
アキレス腱は、下腿三頭筋を構成する、ふくらはぎにある腓腹筋(二頭筋)とヒラメ筋の組織と合流して形成されております。
アキレス腱は下腿で筋頭が集まる合流部分から腱を構成し踵の骨である踵骨(しょうこつ)上端の突起部分に付着しています。
アキレス腱の下端付着部位の踵骨に付着する腱であることからアキレス腱は踵骨腱(しょうこつけん)とも呼ばれます。
アキレス腱は、ヒトの人体に存在する腱組織の中では最大の腱組織であり、また最も強靭な腱です。
アキレス腱の主な役割は、足関節(足首の関節)の底屈動作です。
底屈とは、立位状態で踵を上げる際の動き、座位では足を前方に伸ばした状態でつま先を伸ばす動作の事です。
また、腱自体はスプリングの役割も担っており着地時の衝撃の緩和の際にもアキレス腱は働きます。
アキレス腱そのものは力を生み出す組織ではありませんが、筋肉や外部からのパワーの伝達、増幅の役割を担っているのがアキレス腱と言えます。
アキレス腱は、外力により反応を起こす腱組織です。この反応を利用する手法が腱反射と呼ばれる判定手法です。
椎間板ヘルニアの場合は、障害によって腱の反射が消失している場合があります。
この特徴を利用して、椎間板ヘルニアなどの診断ではアキレス腱反射を確認し症状を確認する場合があります。
腰椎椎間板ヘルニアでは、膝蓋腱・アキレス腱の反射を確認し状態の把握を行います。
尚、頚椎椎間板ヘルニアでも神経系の障害によってアキレス腱反射の消失を確認するケースがあります。
腱反射は膝蓋腱、アキレス腱反射に限らず様々な部位の腱にて行われます。ここでは、一般的に行われる反射測定の部位別の種類を解説します。
【上肢の反射・腱反射の種類】
★上腕二頭筋反射
★逆転上腕二頭筋反射
★上腕三頭筋反射
★逆転上腕三頭筋反射
★橈骨反射
★逆転橈骨反射
★回内筋反射
【体幹部の反射の種類】
★胸筋反射
★腹筋反射(腹筋上部・腹筋中部・腹筋下部)
体幹部の反射は上記2箇所の反射測定が主流です。
しかし、診断方法として腱反射の誘発の診断が難しく経験を要します。
腹筋の反射に関しては、腹直筋の部位別に反射測定を行います。
【下肢の反射・腱反射の種類】
★膝蓋腱反射
★アキレス腱反射
★下肢内転筋反射
★膝屈筋反射
障害の種類にもよりますがこの下肢の反射は最も頻繁に行われる反射測定の一つであると言えます。
反射検査の際に、反射が過剰に働く場合は反射の亢進を疑います。
これは、抑制されているシナプス伝達が機能していない状態であり神経経路の異常をあらわします。
逆に反射の低下・消失が見られる場合は脊髄神経の異常、または筋肉そのものの異常の可能性を検討します。
もともと神経系に異常がある場合、反射そのものがあらわれにくい傾向にあるので注意が必要です。
腱反射のメカニズムを紐解くと、腱反射はヒトが生まれつき持っている防衛反応である事がわかります。
人体は突発的な外力が人体に働く際に、筋組織が損傷されるのを防ぐ為にあらゆる反射反応を示します。
これは、例えば足のつま先をぶつけた時に、とっさに足を引っ込める動作やストーブなど熱いものに不意に触れてしまった場合に手をとっさに引く動作なども反射に属します。
この防衛反応である反射のスピードは生命を守る為に、高速化で処理され通常の神経経路よりも素早い反応を示すのです。
尚、検査に利用される反射はこのような高速回路をもつ反射ではなく、一部情報を抑制されている運動回路を利用する事となります。
その為、腱反射テストでは打腱後、若干遅れて反応があらわれる傾向を確認することができます。