血管造影やCT検査、また腎臓疾患や尿路造影など細かい組織の流れを確認する検査ではヨード造影剤を使用する検査が実施されるケースが多くなります。ヨード造影剤は副作用の心配がよく掲げられますが、近年は水溶性の非イオン系造影剤の普及によりその安全性も徐々に向上してきております。特に脳疾患に関わる病気の可能性が検討されるケースでは脳に張り巡らされている細かい血管組織まで鮮明に映しだすことが可能となる為、ヨードは脳出血や脳動脈瘤、脳梗塞などの脳疾患に関わる検査では重要な造影剤として位置づけられております。ここではヨード造影剤の種類、及び代表的な副作用症状などを確認していきましょう。
ヨード造影剤はX線の透過性が非常に低い性質を持つ無色透明な液体です。
(※ヨード化学記号:I 原子番号:53)
ヨード造影剤は基本的に
●尿路造影検査
●CT検査
●血管造影検査
などの検査の際に使用されます。
ヨード造影剤はヨードの濃度が高まるほどX線写真では、より白く鮮明に写し出され、細かい血管組織までも鮮明に映し出す働きをもっております。
血管造影検査では、ヨード造影剤を使用する検査が現在でも主流であり、腎臓から体外へ排出されるまでの時間や体内へかかる負荷が少ない造影剤のひとつです。
但し、ヨード(葉緑素)を主体とした成分を使用することからアレルギー反応(アナフィラキシーショック等)を示すケースなどもあり、全ての方が実施できる検査であるとは限らない点を把握しておく必要があります。
ヨード造影剤は、水溶性造影剤と油性造影剤の2つの種類に分類されます。
水溶性造影剤は腎機能が正常な方に用いられる造影剤で、注射後6時間程度で約90パーセントが腎臓から尿として排泄されます。
対して、油性のヨード造影剤では、長時間または長期間にわたり体内に成分が残るケースも確認されております。
この2種類の造影剤は検査の目的に応じて使い分けられますが大半のケースでは、水溶性造影剤を使用することになります。
尚、水溶性造影剤は更に分類すると、
●イオン系造影剤
●非イオン系造影剤
に分類されます。
非イオン系造影剤はイオン系造影剤と比較すると「浸透圧」が低く血液に近い状態である為、注入の際に体感する「熱感」などの副反応症状が緩和すると言われております。
【ヨード造影剤の種類・分類】 | |||
---|---|---|---|
ヨード造影剤 | |||
水溶性造影剤 | 油性造影剤 | ||
イオン系造影剤 | 非イオン系造影剤 |
血管造影検査などではこの比較的安全性の高い非イオン系造影剤が使用されるのが主流です。
水溶性ヨード造影剤の副作用は、バリウム造影剤と比較すると、多様な副作用症状を発症します。
代表的な副作用症状としては、一般的に最も発生する反応は注入時に即時に起こる熱感です。
この熱感とは、ヨード造影剤成分と血液との
●浸透圧の違い
によって発生し、血管内を流れていくヨード造影剤を熱く感じる事が原因と考えられております。
しかし、浸透圧は徐々に血液と混ざる事で調和する為、この熱感は徐々に消えていくのが通常です。
非イオン性造影剤は血中でイオン化しないことから浸透圧が血液に近い状態であるため副作用が少ないと言われております。
ヨード造影剤の副作用は、造影剤の注入直後からはじまる急性副作用と、造影注入後、しばらく時間を経過してから副作用を発生する遅発性副作用の2種類の副作用症状が確認されております。
尚、急性の副作用症状は、
●軽度の副作用
●重度の副作用
が確認されており、発症率もそれぞれ異なります。
ヨード造影剤の軽度の副作用症状の発症率の統計は約1~2%程度です
軽度の副作用症状として確認されている主な症状としては以下のような症状が確認されております。
【ヨード造影剤の主な副作用症状(軽度)】
☆吐気・嘔吐
☆蕁麻疹・発疹
ヨード造影剤の重度の副作用症状の発症率の統計は約0.01%~0.02%程度です。
発症率としては低く感じられるかもしれませんが、ごく僅かなケースでは死亡に至るケースも確認されております。
※10万人~20万人に1人の割合で死亡する可能性も報告されている
重度の副作用症状として確認されている主な症状としては以下のような症状が確認されております。
【ヨード造影剤の主な副作用症状(重度)】
☆血圧低下
☆息苦しさ
☆腎機能障害
☆意識消失
このような状況を見ると不安を感じられるかもしれませんが、重度の副作用症状の発症率は非常に低く、安全性という面ではやはりヨードは有能な造影剤である事に変わりありません。
今後、より安全性の高い成分が造影検査に適用されてくる可能性もありますが、副作用症状を発症する可能性に関しては検査を受ける前にやはり自分自身でしっかりと把握しておく事が大切です。